田原の滝
山梨県 都留市
【 現地案内板より 】
名瀑布 田原の滝
相模川は富士五湖の一つである山中湖に源を発し、相模湾に注ぐ延長約109kmの河川であり、山梨県では桂川と呼ばれている。桂川は都留市を縦断して流れており、深い渓谷は田原の滝や蒼竜峡などの景勝地をつくり出している。田原の滝はしぶきをあげて水が流れ落ちる様子から白根の滝、白滝とも呼ばれている。
滝のまわりには、富士山の火山活動に由来する美しい柱状節理が刻まれ、古くからその渓流美が愛でられてきた名瀑布である。江戸時代にはこの滝を見て、松尾芭蕉が俳句を詠み、藤堂良道が五言律詩を読んでいる。このように歴史・文化的に重要な場所であることから、平成17年に都留市指定名勝に指定されている。
富士山溶岩と柱状節理
おおよそ8,000年前に富士山の活発な噴火活動により猿橋溶岩と呼ばれる多量の溶岩が噴出して、大月市の猿橋にまで達している。溶岩は、冷えて固まるときに体積が収縮して、縦方法に多角形の柱が林立したような柱状節理が形成される。この溶岩を長年にわたって桂川が浸食して、趣のある渓谷美をつくりだしている。
渓流再生
田原の滝は、かつては上下二段の滝からなり、水量も豊富で、滝の響きが遠方まで聞こえたといわれるダイナミックな滝であった。しかし、流水の浸食を受け、渓岸の崩落が相次ぐとともに、滝も約30m後退して、周辺の民家などに被害が及ぶ恐れが生じたため、昭和33年に高さ10mの砂防堰堤が建設された。この堰堤は、防災や安全確保に大きな役割を果たしたが、趣のある渓流景観は失われていた。堰堤の老朽化に伴い堰堤の改修が計画されたが、整備にあたっては景観に配慮した工法が実施され、昔の美しい渓流景観が再生されている。
滝巡りの話 第22話 『 ビミョー な話 (その3) 人工滝 』 新たな滝との出会いは強弱の差はあれ高揚しますが、同時に ビミョ〜 な雰囲気を感じてしまう場合があります。 その要因を ①本質的 ②違和感 ③ギャップ に分類、①と③については (滝巡りの話 第16話 参照) を読んで頂くとして、今回は ②違和感 の中で 何らかの理由で人の手が加えられた滝 について少し掘り下げてみようと思います。 まず何をもって 造作を施された滝 とするのかという点ですが、これは非常に悩ましく(上流部で流水量を制御できる等)明確に分類できないのですが、大まかに以下の四つに分けてみました。 田原の滝 は [1]改修型 、過去に立派な滝が実在するも増水等により崩落、対策として堰堤工事が行われ、更に景観向上の目的で擬岩堰堤へと変化します。現在の姿を見てどのように感じるかは千差万別だと思いますが、 常に変化する滝との共存 を模索した過程は興味深いものです。 【 現地案内板 】 現在の 田原の滝 の印象は、一見して ビミョ〜 ではあったものの、透明度の高い豊富な水流、更に推測ですが、上部(最上段の右側)に残る自然岩と思われる部分は悪くないと思います。また堰堤部分についても、その機能と景観維持との共存が生み出した 人工美 を感じ、少なくともコンクリート剥き出し状態より趣があります。 他に [1]改修型 として、静岡県にある 萬城滝 (滝巡りの話 第14話 参照) は 崩落を事前に防止するため岩壁に造作(モルタル注入)が加えられましたが、珍しい 裏見の滝 (滝巡りの話 第5話 参照) の景観は当面維持されることになります。 [2] 導水型 は自然水(上流からの自然流水・湧き水等)を特定の場所において落下させたもので、これも何か違和感があります。 [3] 完全型 は、全て 人の手 により制作されたもので、 庭園 や テーマパーク 等の自然石を配し精巧に創られた滝は、一見すると人工とは思えない景観ですが、何か不自然な部分に気が付きます(気が付かない場合もある)。 [4] は、機能(災害防止・利水)を目的とし 自然景観とは別物 ですが、堰堤流水やダム放流は、 水の流身美 や 造作物自体の美 を感じます。 また、オラファー・エリアソンという芸術家の作品に 『 滝 』 をテーマにしたものがあり、私の中で現代アートは一部感じ難いものもありますが、これは直感的で興味深い作品(実物を見たことはない)です。 人工滝 についての印象や考え方は人それぞれ違うでしょうし、様々な意見があると思います。 「 これはこれで、良いんじゃない ? 」 そのように感じた自らの心もまた、滝と同じように常に変化しているのでしょう。 |
【 アクセス情報 】
専用駐車場 8台
滝はすぐに見え、装いに関係なく気軽に愉しめます