小中大滝
群馬県の滝・みどり市
山道を歩くような場所かと思いきや、予想以上の整備がされており、立派な釣り橋を渡りあっけなく滝に到着。
落差は60m程度と看板に記載されている落差には満たないように感じましたが、それでも大瀑と呼べる規模、豊富な水量と変化のある水の軌跡は見ていて飽きませんでした。
あえてマイナス要素を挙げるとすれば、滝を見る位置が上方であることに加え、角度が限られてしまう事、更に葉が生い茂る時期は隠れ気味になってしまうことでしょうか。
滝巡りの話 第11話 『 一途な想い 』 今回は 「一つの滝にこだわり続ける人」 との出会いのお話
ただ、看板の少し手前に窓の開いた軽トラックが一台停車しており、何となく気になり挨拶すると快い返事と笑顔の反応、地元ナンバーの車で最初は林業、若しくは釣り・山菜採りと思ったが、滝の写真を撮りに来たという。同じ目的とわかり、降下した気分を取り戻すかの如く雑談に花が咲いたが、現実はといえば通行止である。 ところが、捨てる神あれば拾う神あり、何気ない会話の中で私の諦めきれない思いが通じたのか「遠回りだし大変だけど、滝に行く別の道があるから行ってみる?」との一言、私は即決で「御供させて下さい!」ということで、私の古いカーナビでは途中から表示されない林道を、軽トラ先導で向かうことになった。 通行止がなければそこから小中大滝の駐車場まで数分だが、別ルートとなるとグルっと大回りして反対側からのアプローチ、道幅が狭いためゆっくりペースでの走行、結果的におそらく40分近くかかって(途中眺めの良い場所で小休止あり)無事駐車場に到着した。通常であれば案内して頂いただけで感謝感激、十分思い出に残る出会いなのだが、この時は更なる驚きがあった。 駐車場から歩き始めてすぐ、以前には無かった橋を渡りながら、「ここに来るのは10年ぶりです」と話しかけると、相手は「私はこの滝に10年間通い続けている」という。 そこで浮かんだ疑問が二つ、「なぜ小中大滝なのか?」そして「10年、それも毎月通い続けるのは何故?」である。最初の疑問については「他にも色々訪問したが、やっぱりこの滝が一番なんだ」との返事。 もう一つは最大の関心事であったが、いくらこの滝が好きとはいえ10年間毎月というのは尋常ではく、特別な背景があるに違いない・・・。その背景はおそらく良い事と思いたいが、逆の可能性も否定できず尋ねることを躊躇してしまった。そうこうしているうちに、小さなトンネルを抜け吊橋が目前、滝音も耳の中に飛び込んできた。 撮影ポイントに辿り着き眺めていると、小中大滝に一途な人は数分撮影した後「私は戻るので、あとはゆっくりどうぞ」との言葉。私は三脚を広げながら「えっ?もう帰るのですか?」と問うと、「今月は忙しくてダメかと思ったが、何とか来ることが出来たし、撮影も出来たから良いんだ」との返事、そこには私に対する多大な配慮があったと同時に、自らの毎月訪問し続けている状況が途切れず、継続出来たことへの安堵感らしきものが窺えた。何度も感謝の意を伝え、握手を交わし、その人の姿が吊橋の先で見えなくなるまでじっと見送った。その日は五月最後の日曜日であった。 誰もいない観瀑台、独占状態となりゆっくり撮影できるはずだが、予想以上に葉が生い茂り、肝心の滝が隠れ気味、更に明暗差が大きく悩ましい状況だったため、撮影は早々に切り上げじっくり眺めることにした。躊躇して聞けなかった『10年間毎月通い続ける理由』を見付け出そうと試みたが、滝の美しさは十分に理解できるも、さすがに通い続ける理由までは・・・。
滝巡りに限らず出会いとは不思議なもの、通行止箇所に30分早く、また逆に遅く到着しても、おそらくあの出会いは実現しなかったはず・・・。数十分かけ私を滝まで案内し、わずか数分で去っていった「一途なあの人」との再会への思いを胸に、今度は紅葉の時期にまた訪問してみようかな。 |
【現地案内板より】
この滝は、小中川の清流が長い年月をかけて造り上げた落差96mの壮大な滝です。水しぶきを上げて滝つぼへ落ちていく姿を見ると、今にも引き込まれてしまいそうな心地がするでしょう。
春には新緑とヤシオツツジのピンクのコントラストが、また秋には燃えるような紅葉が大滝を彩り、滝の美しさを一層ひきたてます。豊かな自然にかこまれた大滝は、ほかでは味わうことのできない魅力が溢れています。(環境省・群馬県)
【アクセス】
国道122号線 ⇒小中 ⇒ 県道268号線 ⇒ 林道
専用の駐車場(トイレ整備)
林道は舗装路ですが、狭いだけでなく落石等や一部粗くなってなっている箇所もあるので、運転にはご注意ください。
なお、通常わざわざ利用する意味はありませんが、別ルートとして草木ダム湖の北側、「沢入」から林道に入り、逆ルートでも到達可能です。