慈恩の滝
大分県 玖珠町・日田市
落差 30m(上段20m 下段10m) 、透明度の高い豊富な水流でかなりの迫力。
特筆すべきは 裏見の滝 ( 滝巡りの話 第5話 参照 )
【 現地案内板より 】
慈恩の滝の由来
今からおよそ千数百年の昔、この滝壺の中に大蛇が住んでいた。或る年の麦の実る頃、夜中にこの大蛇が滝壺から這い出して麦畑の中でのたうちまわり農民の汗による麦を荒らしてしまいわづか一夜で近況の麦畑はほとんど全滅に近い被害を受けその年の秋の実りの田もこの大蛇に荒らされその後数年間田畑を荒らされ続けた。
このため農民はホトホトこまり八方手をつくし何とか大蛇を鎮めんものと、或るときは、加持祈祷に、またあるときは、滝壺に竹網を張るなどしたがその甲斐もなく大蛇に荒らされ農民は食べるものがなく困窮の果て、先祖より受けついだ田畑を捨て、家を捨てる者が続出しこの地域を離れて行ったのである。
こんな年の・・・・夏の夕暮れどき、地域を通りかかった旅僧がこのありさまを聞き及ばづながら経の効力により大蛇を鎮めて見ようと、その夜折から登る月光の下滝しぶきのかかるあたりに座して一心に読経を続けておりますと、やがて急に滝壺に逆渦巻が起り、波の中から凄まじい形相の大蛇が姿を表したのである。これを見た旅僧はそのような浅ましい姿では経を聞くことはできまい。・・「心をやわらげ、姿を変えて現れよ」と、さとした。
すると大蛇は、ザブンと水中に身を沈め、しばらくしてこんどは頭だけ大きく胴体は筆の軸位に痩細り長さは二丈(7m)あまりみるもあわれな姿で水の上に現れた。旅僧は大蛇に向かい法を説きながら、「何故に田畑を荒らすのか」と問い正すと、大蛇は頭を胴の方にむけて曲げ舌の先で体中を舐め始めたので、旅僧は大蛇に近づき、よく見ると、鱗の間に全身虫が寄生しているのを発見した旅僧はこの大蛇をあわれに思い、その胴体の上を経文で撫でさすると、大蛇は目を細め旅僧のなすままに静かにしていて、病気も良くなりその後は一度も田畑を荒らすことなく稲や麦も実り農民の喜びは大変なものであった。
農民はこの旅僧のために一つの寺を建立し慈恩寺と名付け寄進した。しかし慈恩寺は戦国の争乱で大分府内の領主大友宗麟の軍により滅失したのである。
(大分県日田市天瀬町)
【 別の現地案内板より 】
慈恩の滝の竜の物語
遠い昔、万年山(はねやま)のふもとに小さな川をはさんで、小さな村がありました。その小さな川の先の小さな滝には、一匹の小竜が住んでいました。
村人たちは、いつから、その竜が奥にある穴倉に住んでいるのか誰も知りませんでしたが、悪さをするわけではなくかわいらしい、おとなしい竜だったので、みんな竜のことが好きでした。竜もやさしい村人たちが好きでした。村人たちと竜は仲良しだったのです。
しかし、その竜がどうやら重い病気にかかり苦しんでいることがわかったのです。村人たちは、何とかその竜を助けてやることはできないものだろうかと思いましたが、どうすることもできませんでした。
そんなある日、旅をしているお坊さんが村を訪れました。沢山の修行を積んでいるお坊さんは村人たちのどんな問いにも答えることができました。そのお坊さんに村人のひとりが病気の竜のことを相談したところ、私が竜を助けてやろうといったのです。
お坊さんは、竜に言いました。
「お前は、この滝の中ではもう長くは生きられない。しかし、お前を天空に昇らせてやろう。そうすれば、病気の苦しみから、お前は助かることができるぞ」
竜は喜んで、お坊さんに頼みました。
「どうか、私を天空に昇らせてください。そうすれば、今まで、私を大切にしてくれた村に人たちに恩返しをします」
お坊さんは、穴倉の見える大きな岩に立ち、呪文を唱えました。するとそれまで明るかった空は、一瞬で真っ暗になりました。激しい風が吹き始め、大粒の雨が降り出し、激しい雷鳴と稲光がやむことなく続きます。
次第に竜の体が光り始め、天に向かって浮かび始めました。小さかった竜の体はだんだん大きくなり、長い体を滝のあちこちにぶつけ、体を覆う光をあちこちに飛ばしながら、それでもどんどん上がっていきます。
竜の体がぶつかった岩は砕け、一段だった滝は二段になり、静かに流れ落ちていた滝の流れが、一瞬で激しいもに変わりました。そして、あちこちに飛んだ光は滝壺に落ちていき、しばらく魚のように泳いでいたかと思うと、やがて本物の鯉に変わっていきました。
それから、どのくらいの時間がたったのでしょうか。お坊さんと村人たちが見守る中、竜は天空へと昇り見えなくなってしまいました。
そして、空から声がしたのです。
「ありがとう。お礼に、これから、この地に多くの雨を降らせ、水の恵みを与えましょう」
それからというもの、万年山(はねやま)の上空には沢山の雨が降り注ぎ、川上に水が湧き出し、小さな川は美しい水で満たされました。
それからまた長い年月が経ちました。竜からの贈り物である、この水を大切にしようと思った村人たちは、険しい山の中にもかかわらず、みんなで力を合わせて、川の両方にみごとな水路を引きました。その水路のおかげで村中の田畑はうるおい、たくさんの農作物ができ、村人たちは、豊かで平和に暮らしていくことができました。
水は、長い水路を通って二段になった滝に落ちていき、滝壺には村人たちから大切にされている鯉が元気に泳ぎまわり、その水しぶきの中に、ときたま、一瞬、竜が姿をみせることがあるということです。
内容が似ているようで異なる二つの物語、私としては 後者のほうが好み です。
伝説は伝説として、実際の力強い水流と大きな滝壺、今まさに天に昇る竜の姿を見ている気がしました。
滝は道の駅の隣、アクセス抜群で誰もが気軽に愉しめます ♪
反面、誰にも邪魔されず静かに眺めたい人には悩ましい雰囲気かも?
【 アクセス等 】
「道の駅 慈恩の滝 くす」 の駐車場から数分、付近に軽食店あり ♪