萬城の滝

静岡県の滝・伊豆市

萬城の滝(正面)萬城の滝(右岸) 萬城の滝(左岸)萬城の滝(裏側)

 私の好きな 『裏見滝(滝巡りの話 第5話)』 、様々な角度からの眺めを愉しむことが出来ます。

 落差は20m、張り出した岩から豊富な水量で一気に滝壺へ、直瀑ならではのスッキリした流身は非常にシンプルで痛快です♪

 裏側に足を踏み入れれば轟音に包まれ、滝の音以外に何も聞こえず少し怖いくらいです。

 裏側への進入禁止の看板があります。私は我慢できず裏側に入りましたが、安全上は行かないほうが無難です。

 上流へ向かう途中に踏み跡があり辿ると、予想通り滝口(右画像→)からも眺めることが出来ました。ただ、高所恐怖症の私には・・・。

 上流には 小滝 や 甲羅岩(淵) があるので、余裕があればセットでどうぞ♪

萬城の滝口

【 現地案内板より 】

 (町指定文化財)

 高さ二十メートル、幅六メートルのこの滝は、四季を通じて、水勢がおとろえず、落水するようすは、誠に男性的です。
 古くは大滝と呼ばれ、滝の裏側の遊歩道から落水をみることができることから別名「裏見の滝」と呼ばれています。
 「赤牛にのった赤姫が、機を織る音が水の音と合して、牛のなき声に似ているので、滝の主は赤牛である」という赤牛の伝説も残されています。
 滝の周辺には、種々のやどり木や、玄武岩の柱状節理の地肌など見え、夏には涼しさを求める人のかっこうの休息所です。


【 アクセス等 】

 キャンプ施設を含めた専用の広い駐車場があります。
 萬城の滝は駐車場からすぐ、この滝だけの鑑賞の場合は装いに関係なく誰もが気軽に楽しめます。


萬城の滝 現地案内板

 滝巡りの話  第14話 『 自然保護と安全対策の狭間で・・・ 』


 今回は滝好きの一人として、「ちょっと悩ましい・・・」 のお話


 第9話 でも少し触れましたが、滝の美しさは人の手が一切加わっていない状態が最上ながら、様々な理由により何らかの手が加えらた滝も存在します。その中の一つが『萬城の滝』

工事前の萬城の滝

 私は「裏見滝(第5話)」が好きで、この滝も非常に気に入っているのですが・・・。以前の画像(右)と比較して頂ければ分かると思いますが、人の手が加わり景観が少し異なっています

 造作は平成22年10月〜平成23年年1月にかけて行われ、目的は「落石の予防(崩落防止)」とのこと。
 工事については賛否両論あると思いますが、私自身はどちらとも言えず何とも複雑な心境。

 なぜなら、自然景観に重点を置く個人的な立場としては、マイナス要素が大幅に増大しつつも、管理者側や地元の観光関係者の立場からすればやむを得ない措置とも思え、プラスの部分も大きいと感じたからです。

 そのプラス要素とは「安全性の向上」及び「裏見滝(観光資源)の保護」です。滝周辺にはキャンプ施設等がある上、毎年お祭り等も開催されており、老若男女、誰もが安心して気軽に楽しめる場所として安全対策を重視、更に観光資源として特異な裏見滝の継続性、また景観維持も十分考慮して工事が行われたようです。

 さて、なぜ単なる滝好きの端くれである私が、別の立場のことを思うのかといえば、私自身が滝巡り道中において、他人事とは思えない悩ましい状況がありまして・・・。
 『萬城の滝』では本来裏側から楽しむことができるものの、工事終了後も「進入禁止」の看板は以前のまま、最大限の安全を考えた場合、裏側に行くことは避けたほうが良いことは言うまでもないでしょう。しかしながら、『自己責任』の名の下に・・・、ヘルメット装備・頭上足元周辺への細心の注意を払い、かつ短時間・・・。

 ここで問題になるのが「万が一」が起きてしまった場合の法的責任です。ご存知の方もいると思いますが、平成21年に結審した「奥入瀬渓流落木事故国家賠償請求訴訟」、これは奥入瀬渓流遊歩道において、落下したブナの枝が下にいた人を直撃、大怪我を負った女性が夫とともに県と国に対して損害賠償を請求し最高裁まで争われた結果、賠償命令が下ったものです。

工事後の萬城の滝

 他にも、平成15年に青森県の十和田八幡平国立公園城ヶ倉渓谷渓流歩道にて登山者が落石を受けて死亡、家族が青森市を提訴、市は賠償金の支払を命じられています(残念ながら城ヶ倉渓谷渓流歩道は、現在も封鎖のままであるようです)
 また、昭和54年、三重県の大台ケ原にある大杉谷の吊り橋のワイヤーが切れ一人死亡、更に一人が怪我を負った事故で、遺族が三重県を提訴、県は賠償を命じられています。

 この法的責任問題は行政のみならず、当然一般の地主にも影響します。私が訪問した中では、埼玉県にある両神山の登山道(白井差新道)を少し入った場所にある「昇竜の滝(私有地内)」、道路地図にも記載されている滝なのですが、訪問時は一般の滝見が出来ない状態(現在は条件付で観瀑可能)でした。
 ただ、ダメ元で訪問した際に直接地権者の方とお会いでき、地主自ら滝までガイドして頂き眺めることが出来ましたが、「登山道を一般開放できない理由の一つが、この私有地内で事故が起きた場合の責任問題」とのことでした。


警告看板

 不特定多数の観光客やキャンプを楽しむ人が訪れる『萬城の滝』についても、万が一崩落等により人的被害が発生した場合、管理者である行政側の責任が問われる可能性が十分考えられるわけです。
 また私自身、自己責任での行動であったとしても、もしものことを思うと非常に悩ましい問題を秘めています。それは関係者等に何らかの迷惑がかかるだけでなく、家族等が賠償訴訟を起こす可能性も完全には否定できないからです。

 滝の撮影を終え岩肌をじっくり眺めていると、「もしこの滝が何の施設もない山の中でひっそりと流れ落ちる滝であったなら、崩落防止の造作が施されることは勿論、進入禁止の看板等も存在せず、管理者責任の問題等も発生しないのだろうか?」との思いが生ずると同時に、「誰もが安心して気軽に滝を愉しむことが出来るのも、整備があってこそ・・・?』という悩ましい現実に、何とも複雑な心境になりました。

 形状が珍しい裏見滝、工事が終了したのだから滝の裏側を一般開放しても良いような気がしますが、やはり安全上や法的責任の問題等が影響しているのでしょうか?

 自然景観保護と観光開発(安全確保)の難しさを改めて感じた『萬城の滝』、滝本体は工事前と変わらず「力強さ」と「美しさ」を兼ね備えたスッキリとした流身、岩壁には人の手が加わりましたが、経年による景観変化の確認を含め、改めていつか再訪したいと思っています。


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